諸々の本
2013・4・4
『非差別の食卓』以来、上原善弘氏の本にハマった感じ。文章は抑制が聞いており、バランスが取れている。また視点と言うか、氏の相手との距離感が、超えることもなく、離れることもないので、ほどよい距離感を感じる。読んでいて圧迫感がない。淡々と進行していく過程は良い。
☆聖路加病院訪問看護科
訪問看護とは何ぞや、訪問看護の看護師のドキュメントであると感じた。親も2年半、訪問看護のサービスを受けた。略して訪看。日本で一番歴史のある聖路加病院の訪問看護、しかし戦前から訪問看護があるのは知らなかった。介護保険以前からあるとはなんとなく知っていたが、戦前からあるのは驚いた。
訪問看護はとても良いサービスであるとは実感するし、できれば要介護になりドクターから了解が出れば利用した方がいい。家族を精神的に支えてくれるようになり、ドクター任せでいるよりはずっと精神的に楽になる。何よりも相談ができるようになるので、心強い。特に体調の急変が起きた時は、すぐ救急車より訪看の指示の方がいい時がある。一見すごい状態に見えても、案外大した事がない時もあるので、またその逆もあるので、いつも訪問してる、看護士に一報を入れることが大事である。あわてて救急車を呼んでも、くたびれ損のくたびれ儲けなんて事もある。
訪問看護を知るためには良い本であり、家族も訪看の気持ちを理解するために良い。家族の前で、介護サービスをする時は病棟とは違い相当緊張すると言う。改めてやはりと思った、いや感じた。おちゃんとしては介護サービスを、看護士、ヘルパーがしてる時は原則家族はいない方がいいと思う。口には出さないが、はっきり言うと邪魔なのである。家族の目があってやりにくいし、家族が変に口を出すと集中できない、緊張する。
おちゃんは原則、訪問系の介護サービスの時は見ない、任せる。ヘルパーも家族の目があるとやりにくいし、こっちはやり難いよねって聞くから、ハイと答えてくれるので、立場を理解してくれてると感じるので、そうなればこっちのものである。意外とうまく付き合っていける。まー自分を理解する前に相手を理解するって事は、最初の段階でやっておけば後は楽。家族が出来ない事をしてくれるのだから、その分の心使いはした方がいい。
在宅における介護サービスはお互いの信頼関係である。これをなくして良いサービスにはならない。ある意味お互いの人間性も問われる。しかしチェックは怠るべきではない、あればクレームを言えば良い。上司に。
聖路加の訪問看護はトップレベルにあるにしても、訪問看護は激務であり、いくら忙しく、疲れていても、それを見せないようにし、病棟に勤務してる時より緊張を強いられてる事は全ての訪問看護に携わる看護師には共通するだろう。その看護師に対する作者のまなざしは優しく、温かい。だから同行も出来たのではと想像する。外部の人を家に入れる事を嫌い、訪問系のサービスを嫌う家族もある、まして全く関係のない人の同行はもっと難しい。それが可能にしたのは作者の人徳だろう。
あくまでも訪看の立場で観察し、感じ、書いてあると感じたが、だからと言って訪看の方に偏ってるわけでもない。作者目線、感じも書いてあるが、だからと言って自分の意見がうるさいとは感じない。控えめである。相手の立場目線の文章、自分目線の文章の量のバランスが良い。しかし訪看の移動が自転車とは驚いた。結構荷物が多いのに。重いし。
またマネージャーの押川さんの人生も中々である。面白い。いつかは辞めるつもりが続いてる、他のスタッフもそうらしい。これはこれで良いのでは。在宅か施設か病院か、答えは出ない、出るものではない。作者も押川も、自分の家族の時は迷う、看取った後はこれで良かったのかと。
訪問看護とは何ぞや、在宅介護、在宅での看取り、訪問看護を取り巻く状況。絶対読んでほしい。
☆異形の日本人
うーん、期待倒れです。これで大宅惣一賞ですかって感じ。『聖路加病院訪問看護科』の出来が良いせいか、ウーンて言う感じ。
ターザン姉妹は学問的興味から始まり、途中でプライバシーとか、人権とかいろいろありで中途半端で幕引き。その事件を追ったもののやはりモヤモヤで終わってる。限界なのだと思う。しかし学問的興味で、ここまでやるかとその時代の人権の無さに驚く。
後はその時話題になった事件のその後を追う形で書かれた物だが、真相をその当事者に聞くと言うものである。そこには生きていくと言う、型にハマらない生き方、世間はいろいろ言うがどうなんだと言う強さみたいなものを感じた。
それと坂田三吉をかきたいのか、桂春男児かきたいのかよく分からない。
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