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魂の流木

2010・8・30

 面白い、おちゃんにとって久々花丸の本である。このくそ暑さ、くそ忙しさの中、二日間で一気の読んだ。早速本屋のねーちゃんに「面白い、面白い、一押しどころか、二押し、三押し、十押ししてもいいよ」.、ねーちゃん「やっぱり、面白そうだと思ってたけどさ本当なんだ、店に置く分注文するか」、「面白さ,、受けもいいよ」

 表紙を見た時、うん、面白みに欠ける気がし。ところがどっこいどっこい、一気にどっぷりはまる。著者マイケル・S・コヤマの封印された半生を著者自身が小説の形をとって書いたもの。日本人とタイ人女性の間に生まれ、大東亜戦争の中日本軍の強制送還で父と日本の土を踏み、間もなく父は処刑、孤児院に預けられ、戦後すぐ孤児院を脱走、仙台へ行くつもりが三宮、闇市でストリートチルドレンのような生活、そこも出て芦屋でアルバイトをしながら、周りの人に支えられ芦屋高校入学、東大入学。アメリカの奨学金を受けてアメリカへ、その後、当時はアメリカは徴兵制なので、徴兵されその後軍務に着く。ヨーロッパでは諜報活動。

 これだけの半生を経験する人はまずいない。読者としては小説の世界でも非常に興奮するが、これが事実という衝撃。読む価値は十分ある。驚くのはどんな環境にいても学習するという意欲、向上心、努力である。若いながら先を見る力、自分の可能性にあきらめず挑戦するすごさ。

 しかし人に好かれると言う、性格の良さが自然に備わってるのか、どのような逆境にいても手を差し伸べてくれる人もあったからだろう。ただ頭が良い、要領の良さではここまでは来ないだろう。また常に学習することに意味があると教えた父親、タイを離れるまで学ぶと言う素晴らしさを経験してきた事もあるだろう。

 人生の場面場面で様々な人にめぐりあい、助け助けられて、成長していく。特に三宮の闇市の小西さんに拾われて事が、良かった。見て見ぬふりのバランスが良い、芦屋のパン屋のおばさん、芦屋高校の先生。友人、今の時代より柔軟な考え方。たくましさ。厳しい時代、くそまじめな型にハマった考え方では生きていけない、生きていくと言う事を考えれば、正しいことばかり言ってられない、理想は理想、現実は現実である。

 特に芦屋高校の井口先生「日本は今異常な事態だから、異常な事が起きてもそんなに驚く事はない」と言って芦屋高校へ入学出来るように尽力する、校長見解の入学。翌年からは中学を卒業した生徒しか受験資格がない、ギリギリセーフ。しかし井口先生の発言は現代であればぼこぼこにされるだろう。「異常な時代からこそ、異常な事が起こらないように」であろう。しかしおちゃんに言わせれば異常な時代で、異常な事が起きて巻き込まれる可能性があれば、巻き込まれないようにするである。

 確かに著者はたった一人で日本で過ごし、アメリカに行った。しかし日本では少々生き辛い経験をしたけれど、周りの人たちは実の親、兄弟のように世話を焼く。今は自分の都合のいい世話を喜んで受けるが、気にくわないお世話はウゼーで終わる。また同じような世話もボランティア、サポート機関、それにマスコミが乗っかって、大騒ぎになるかも。

 諜報活動の面白さに目覚めていく、過程は非常に面白い。生活のため軍の物資を盗む女性、非合法で親族を入国させるための資金に軍の物資を流すアメリカ軍人。悪い事であるが、どこかで理解をしてる著者の優しさ。

 最後の芦屋出の同窓会はほろりとさせるものがある。著者は意識して芦屋を訪れなかったが、決心して出た。著者はクラスメイトの中にスッと入っていけるか悩んでいた。しかし按ずるより産むがやすし、スッとはいっていく自分に驚く。50年という時間の壁を超えた。クラスメイトとは不思議なものである、壁があるなと思ってもない。おちゃんもクラス会に出るたび感じる。この不思議さはなんだって。だから共感してほろりとした。まーおちゃんが本を読んでなくという事はまずない。ホロリ程度、まーそれもまずない方。

 また著者が経済学を専攻した理由は、貧困、格差の考え方の根底に三宮の闇市の経験、芦屋での経験。日本にいた10年間は思い出したくない事もあった、しかしそれ以上に懐かしさがあり、本当は芦屋、三宮に来たかった気がする。しかし故郷は遠きにありて思う物で、と日本人は考える、理解するだろう。しかし著者は日本国籍を持ち、アメリカに行く時はタイの移民のビザ、そしてアメリカに帰化、その複負雑さは芦屋を遠ざけたのだろうか。しかし芦屋での苦労、苦学、でも楽しい高校生活、著者をどこかで支えていたのは確かであると思う。

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